おじさんの必死な不倫

身長165cmの私はヒールを履くとかなり長身になる。
満員電車に乗るときも、一般的な女性に比べて頭ひとつ飛び出るので楽だ。
わざと、というわけではないが、自分の前にいた女性のスマートフォンの画面をのぞき込むような形になることが多く、ついつい凝視することがある。

身動きとれないほどの混雑なので、あしからず。
私と同年代の20代後半の女性は、彼氏からメールが来たようだ。
ハートのマークがたくさんついたメールで、「今夜は暇ですか?僕は出張ということになっているので、映画や食事に行ったあとも時間があります」と書かれていた。

女性は「ばれないの?」と一言だけ返信。
その一言で、私はすべてを悟った。
これは不倫だ!みんな不倫よくやるな〜と思いながら、まだ20分は着かない満員電車の中でさらに興味津々になった。

女性はソーシャルゲームをしながら、メールが来たらメール画面に切り替えているようだった。
「ばれないの?」のあとに、ゲーム画面に切り替えたとおもったら、またメール画面を開いて誰かにメールを送っていた。
「おじさんが必死なんだけど(笑)」と慣れた手つきでメールを作成して送信。

またまた私は、やっぱり不倫だ!と確信した。
おそらく女友達に報告しているんだろう。
そうこうしていると、ハートがいっぱいのメールが届いたようだ。

地図画面を添付していて、どうやら待ち合わせ場所のようだ。
この女性、「おじさん」と陰でせせら笑っているのに、行くのかな〜と疑問だが、駅に着いてしまった。
車両のほとんどの乗客が降りる駅で、あっという間に女性も人混みの渦にまきこまれて降りていった。
まったく赤の他人だが、「おじさん」をもてあそぶのはどうだろうかと気になってしまう。